企業の喫煙対策に役立つ様々な情報をご紹介します。

健康診断とタバコ【医師監修】

日本における感染症以外の死亡原因は、下の図1のように高血圧や運動不足など、生活習慣に関連したものが多く、その中でも「喫煙」が危険因子のトップとなっています。この図1からも生活習慣が私たちの健康にとってとても重要なことが分かります。
健康診断は、私たちの身体に症状もなく忍び寄る生活習慣病の早期発見の役割を果たします。その中でも「喫煙」は、単独で身体に大きな影響を及ぼすことが分かっており、健康診断の問診でも必須項目となっています。また、「喫煙」は、血圧、血糖値、脂質へも大きく影響し、動脈硬化の発症リスクを高めたり、有害物質が細胞にダメージを与えたりすることで心臓や血管に関連した病気(循環器疾患)やがん、呼吸に関連した病気(呼吸器系疾患)など様々な病気の原因となります。今回は、タバコの煙による身体への影響について、一般的な健康診断の検査項目と合わせて解説していきます。

図1【2007年の我が国における危険因子に関連する非感染性疾患と外因による死亡数】

出典:厚生労働省健康局がん対策・健康増進課「健康日本21(第2次)について」から引用したグラフを加工して作成。
https://www.mhlw.go.jp/stf/shingi/2r9852000002g2a8-att/2r9852000002g2h7.pdf


編集・作成:T-PEC

健康診断のおもな検査項目

まずは、おもな検査項目とその基準について見てみましょう。
図2【健康診断検査結果】

出典:公益社団法人日本人間ドッグ学会「【参考】平成30年度版 判定区分表(2018年4月・12月14日一部改訂)」
https://www.ningen-dock.jp/wp/wp-content/uploads/2013/09/e94328f0cf4662c5606822396807a878.pdf

編集・作成:T-PEC

図2は健康診断の検査項目とその結果をまとめたものです。健康診断では、正常範囲を「A・異常なし」とし、その他異常を段階的に分類しています。

検査項目と喫煙による影響

次に、図2の検査項目がどのようなことを示しているのか、また、喫煙によってどのような影響を受けるのかを合わせて見ていきましょう。

■血圧

【血圧】
血圧とは血液が血管を押す力で、血管内の圧力のことをいいます。この血管への圧力は、心臓が全身に血液を送るために生じるものです。血圧が高くなると、血管に負担がかかり、様々な病気の原因となります。

【喫煙による影響】
タバコの煙に含まれるニコチンは、身体を活発に働かせる交感神経を刺激するカテコールアミンという物質を血液の中に増やします。それにより血圧が上昇し、脈拍が速くなります。喫煙による一時的な血圧の上昇が血圧測定に影響するということで、健康診断前は喫煙を控えるように注意書きをしている医療機関もあります。また、長期的に血圧が高い状態が続くと血管の壁が傷ついて、動脈硬化を引き起こします。

■血糖値

【血糖値】
血糖値とは、血液の中のブドウ糖の濃度のことをいいます。甘いものはもちろんのこと、ご飯やパン、麺類などの炭水化物を食べると血糖値が上昇しますが、すい臓からインスリンという物質が分泌されることで、上昇した血糖値が下がります。インスリン以外にも様々な物質が作用し、血糖値を正常範囲内に維持しています。図2の検査項目では、「空腹時血糖値」をあげています。空腹時血糖値は、10時間以上絶食したあとの血糖値で、前日の夕食後より何も食べず、朝食前に測定します。

【HbA1c】
ヘモグロビンエーワンシーと読みます。血液の赤い成分(赤血球)のヘモグロビンに結合しているブドウ糖です。過去1~2ヶ月間の平均の血糖値を示します。

【喫煙による影響】
血圧の上昇に関与するカテコールアミンは、血糖値にも影響します。喫煙によりカテコールアミンが血液の中に増えると、血糖値を下げるインスリンの作用が低下します。インスリンの作用が十分に発揮できないと、血糖値は上昇します。また、その状態が長く続くと、血糖値を下げるために過剰にインスリンを分泌し続け、最終的にインスリンを分泌する機能が低下してしまいます。そのため、喫煙者は非喫煙者に比べて糖尿病になりやすいといわれています。また、血糖値が高い状態が続くと、血管の壁にダメージを与え、動脈硬化へと進行します。

■脂質

【血清脂質】
図2の「脂質」は血清脂質のことです。血清脂質とは、血液中の脂肪分のことをいい、中性脂肪やコレステロールなどがあります。脂肪と聞くと、悪い印象をもつ方も多いと思いますが、身体の健康を保つ上で重要な役割があります。

【中性脂肪】
私たちの身体は、活動するために血液の中の糖分をエネルギー源としています。その糖分が不足すると、エネルギーの貯蔵庫の役割を担う中性脂肪がエネルギー源として活用されます。しかし、食べすぎなどで過剰に摂取した糖質はエネルギーとして活用されず、皮下や内臓に中性脂肪として蓄えられます。また、中性脂肪は身体を寒さから守ったり、内臓を衝撃から守ったりする重要な役目も担っていますが、中性脂肪を必要以上に溜め込んでしまうと、肥満症になるばかりでなく、善玉コレステロールが減り、悪玉コレステロールが増えて脂質異常症になります。

【コレステロール】
コレステロールは、私たちの身体をつくる細胞の膜や身体の働きを調整する物質(ホルモン)などを作るために必要です。血液によって全身に運ばれ、余分なコレステロールは肝臓に貯蔵されます。コレステロールは善玉と悪玉があり、それぞれ役割が違います。
・HDLコレステロール:善玉コレステロールといわれ、余分なコレステロールを回収し動脈硬化を抑えます。
・LDLコレステロール:悪玉コレステロールといわれ、肝臓で作られたコレステロールを全身に運び、増えすぎると動脈硬化を起こす原因ともなります。

【喫煙による影響】
タバコは、中性脂肪やLDLコレステロールの合成を促し、HDLコレステロールの減少を促すことが分かっています。血液中の脂質のバランスが崩れると、高血圧などで血管の壁にできた小さな傷にコレステロールなどが蓄積して、動脈硬化を促したり、血管の内側が狭くなったり、詰まってしまうことがあります。

タバコは、上記以外にも私たちの身体に様々な影響を及ぼします。
タバコの煙に含まれる一酸化炭素は、全身に酸素を運ぶヘモグロビンと結合しやすく、喫煙によって全身の酸素不足を引き起こします。酸素不足が起こると、身体は全身に酸素をめぐらせようとするため、血液が多く作られ、血液の粘度が強まり、血液の塊ができやすい状態になります。また、喫煙することにより、血管に炎症も起きます。
喫煙は、高血圧や糖尿病、脂質異常症などの生活習慣病の要因となるだけではなく、動脈硬化を進行させる大きな原因ともなります。
タバコによる身体への影響を下の図3にまとめます。

図3【タバコによる身体への影響】

おわりに

健康診断は定期的に受けることで、自覚する症状がなくても身体の状態を知ることができ、病気の早期発見や健康管理にも活用できます。
喫煙者は非喫煙者に比べ、心筋梗塞や狭心症などの虚血性心疾患となるリスクが2~3倍になるといわれています。喫煙は、動脈硬化性の病気やがんなど、様々な病気の危険因子として見直すべき重要な生活習慣の1つです。
健康診断を受けた際は、受けっぱなしではなく、自分の生活習慣を見直すきっかけとしてみませんか。また、健康診断の結果で気になる項目や、指摘を受けた項目があった場合は、放置をせずに必ず精密検査を受けるようにしましょう。


****************************

監修者プロフィール:
成田 亜希子
弘前大学 卒業
医学部卒業後、一般内科医として勤務。
公衆衛生の分野にも携わり、国立医療科学院での研修も積む。

****************************


カテゴリー : 喫煙と健康

キーワード :