企業の喫煙対策に役立つ様々な情報をご紹介します。

企業で取り組む禁煙サポート/禁煙手当を支給する際の留意点は?

喫煙は、職場の受動喫煙の問題、企業の業務効率の阻害、企業イメージの悪化など、職場においてもさまざまな弊害があります。
詳しくは、前回記事及び前々回記事をご覧ください。
https://workplace-kinen.t-pec.co.jp/list/detail/id=272
https://workplace-kinen.t-pec.co.jp/list/detail/id=275
また、労働者がタバコ関連病に罹患して健康を害すれば労働能力の喪失にもつながります。
使用者としては、労働者に禁煙してもらい、これらの弊害をなくして、労働者に健康に働いてもらいたいと考えるのも自然な流れにあると言えます。
 しかしながら、喫煙をやめることは容易ではないため、企業で禁煙をサポートしていく必要があります。この記事では、禁煙支援の具体的方法と留意点について、岡本総合法律事務所の岡本光樹弁護士に伺いました。

【質問】企業で行う禁煙支援にはどのようなものがあるのでしょうか?

喫煙をやめることは容易ではありません。喫煙(ニコチン)は依存性があり、個人差はありますが多くの場合、本人の意志のみで禁煙・卒煙することは困難です。実際、約6割の喫煙者が「やめたい」又は「本数を減らしたい」と答えながら、喫煙を続けています(厚生労働省「平成28年国民健康・栄養調査報告」)。
 自力での禁煙は困難なため、禁煙を積極的にサポートする職場も増えています。
 職場による禁煙支援として、以下のような取り組みがなされています。
○禁煙の重要性や禁煙治療に関する情報提供・啓発活動
○医師等の講演・禁煙教室
○産業医による禁煙指導、健康診断結果に基づく働きかけ
○健康保険組合との連携
○安全衛生を担当する従業員の設置、同担当者による禁煙サポート
○イントラネットの活用、禁煙支援メール
○企業による禁煙治療費の負担、禁煙治療費の補助
○禁煙達成者および禁煙サポート者への報奨

 喫煙・ニコチンの依存性(やめにくさ)からすれば、医療機関での禁煙治療を受診することが適切な場合が多くあります。喫煙による弊害の改善のために、従業員の禁煙治療受診を積極的に後押しする企業が増えつつあります。

 なお、近年、行政が、禁煙外来医療費の自己負担額に助成金・補助金を出すといった自治体が増えつつあります。東京都では中央区・品川区・北区・荒川区・練馬区・港区・豊島区、大阪府では吹田市、他県では千葉市などがあります。
 企業がこうした情報を従業員に積極的に知らせることも有益でしょう。

【質問】禁煙手当を支給する際、留意した方が良い点はあるでしょうか?

 いわゆる「禁煙手当」には二つの種類が見られます。
 ・喫煙者が禁煙した場合に、禁煙達成への報奨として給付するもの。
 ・非喫煙者及び禁煙している者に対して、給付するもの。たとえば、1ヶ月間1本もタバコを吸わなかった者に、禁煙手当を支給するというもの。
 前者については、非喫煙者から、次のような苦情が出ることがありますので、実務上留意が必要です。すなわち、非喫煙者からすれば、喫煙者はもともと喫煙によって仕事の能率を低下させ、また周りに迷惑をかけていただけであり、禁煙することによってそれが正常に戻るというだけなのに、なぜ手当がもらえるのか、という苦情です。また、喫煙者はそうした禁煙手当給付がもらえて、非喫煙者はそうした給付がもらえないのは不公平であるという苦情も言われます。最初から周囲や企業に迷惑をかけていない非喫煙者が手当をもらえず、周囲や企業に迷惑をかけていた喫煙者が手当をもらえるのはおかしいという主張です。
 こうした苦情に鑑みれば、上記のうち後者の、非喫煙者及び禁煙中の者に一律に給付する「禁煙手当」の方が妥当と言えるでしょう。

【質問】禁煙手当の虚偽申告・受給があった場合の留意点があれば教えてください。

 労働者が喫煙を隠して禁煙の旨の虚偽の申告をして、不正に禁煙手当を受給していた場合(唾液調査により判明した例があります。)、不正受給に係る禁煙手当の返還を当該労働者に請求することは、当然です。当該労働者は本来受給できないはずの禁煙手当を不正に受け取ったのですから、使用者は、当該労働者に不当利得返還請求(民法703条・704条)または詐欺(民法96条・刑法246条)の不法行為に基づく損害賠償請求(民法709条)を行うことになります。
 もっとも、違約金の定めや損害賠償額の予定の禁止(労働基準法16条)、給料からの相殺禁止(民法510条・民事執行法152条・労働基準法24条)等に留意する必要があります。
 懲戒処分としては、就業規則の根拠がある場合に、譴責・戒告などの懲戒処分が通常考えられますが、減給・出勤停止等は処分が重すぎないか慎重な判断が必要でしょう。また、この一事の不正をもって懲戒解雇や普通解雇を行うのは、無効(労働契約法16条)となる可能性が高く、他の選択肢を検討すべきでしょう。

企業としてできる禁煙サポートにはさまざまなものがあります。禁煙手当を支給する際は上記ポイントを参考にし、違反があった場合は制裁が行き過ぎないよう配慮しましょう。

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岡本総合法律事務所 
弁護士 岡本 光樹(おかもと・こうき)先生

2005年東京大学法学部卒業、2006年に弁護士登録。
森・濱田松本法律事務所にて、ファイナンス、M&A、一般企業法務、労働事件等に取り組んだ後、2008年に小笠原国際総合法律事務所に移籍。倒産案件・企業再生案件、会社法訴訟案件、労働法務・労使紛争(使用者側・労働者側いずれも受任。裁判・仮処分・労働審判・あっせん)、労災行政訴訟事件等を多数担当。
2011年9月に岡本総合法律事務所を開業。上場会社の社外監査役、中小企業の顧問等務めつつ、個人の法律相談や訴訟も受任。
2017年7月に東京都議会議員に就任。
公益活動として第二東京弁護士会 人権擁護委員会 副委員長、及び、同委員会 受動喫煙防止部会 部会長を務める。
日本禁煙学会理事。
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カテゴリー : 喫煙と法律問題

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