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受動喫煙で健康被害増大!~吸わない人が苦しむタバコの影響について~

「受動喫煙」とは、強制的にタバコの煙を吸わされること

タバコの煙には3つの種類があります。

・主流煙:喫煙者が直接タバコから吸い込む煙
・副流煙:火をつけたタバコの先端から立ち上る煙
・呼出煙(こしゅつえん):喫煙者が鼻や口から吐き出す煙

このうち副流煙と呼出煙を合わせて「環境中タバコ煙」と呼び、喫煙者本人も含めた喫煙者の周りにいる人たちが環境中タバコ煙にさらされることを「受動喫煙」といいます。環境中タバコ煙は主流煙とは異なり、本人の意思とは無関係に吸わされるものです。そのため、受動喫煙のことを「強制喫煙」や「不随意喫煙」などと呼ぶこともあります。

受動喫煙で吸い込む副流煙は、主流煙よりも強い毒性を持つ

タバコを吸っている人の近くにいれば受動喫煙を免れません。受動喫煙の大きな問題は、喫煙をする本人よりも受動喫煙のほうが身体への影響が大きいことです。
通常の喫煙時にタバコのフィルターを通して吸い込む主流煙は、900℃に達する高熱でタバコが燃えることにより発生します。燃焼によって主流煙は酸性になり、高熱で燃える際にタバコに含まれる有害物質の一部も分解されます。また、主流煙はフィルターを通して吸い込まれることから、体内にとり込まれる有害物質の量はさらに減少します。
一方、受動喫煙の際に吸い込む副流煙は、タバコの先がじりじりと少しずつ燃えていくときに発生するものです。副流煙が発生するときにタバコが燃える温度は、500℃ほどしかありません。そのため、副流煙は身体にとって毒性が強いアルカリ性となり、燃える際に分解されずに残った有害物質を多く含みます。加えて主流煙のようにフィルターを通さず直接吸い込まれるため、副流煙ではより多くの有害物質が体内に吸収されてしまいます。
以下の表は、副流煙に含まれている有害物質をいくつかピックアップし、その含有量を主流煙と比較したものです。

副流煙に含まれる有害物質は、タバコの主な有害物質として知られるニコチン、タール、一酸化炭素が主流煙の約3~5倍です。目やのどなどの粘膜を刺激するアンモニア、ホルムアルデヒドと強い発がん性があるニトロソアミンにいたっては、主流煙の約50倍にもなります。

受動喫煙が成人の身体に及ぼす影響

このように毒性の強い副流煙にさらされ続ければ、当然、さまざまな疾患のリスクも高まります。
副流煙に含まれるさまざまな発がん性物質は、がん発症のリスクを高めます。また、副流煙に含まれる有害物質の中には、血をドロドロにして血行不良を起こしたり血圧を上昇させたりする物質もあります。これらの有害物質により、動脈硬化や心筋梗塞、脳卒中などを起こすリスクも高まります。
また、受動喫煙により、虫歯や歯周病など口腔系の疾患、肺炎や気管支炎、気管支ぜん息など呼吸器系の疾患にもかかりやすくなる可能性があります。日本呼吸器学会によれば、職場や家庭で受動喫煙の環境にある人はそうでない人に比べて、気管支炎のリスクは1.7~5.6倍、気管支ぜん息のリスクは1.4~1.6倍になるといわれています。

さらに、受動喫煙が原因でさまざまな疾患にかかりやすくなるだけでなく、死に至るケースもあるのです。受動喫煙の環境にある人はそうでない人に比べ、がん(肺がん)・心筋梗塞・脳卒中の3大死因で死亡するリスクが上昇するといわれています。日本呼吸器学会によると、それぞれのリスク上昇の割合は、肺がんで1.2倍、心筋梗塞で1.2~1.3倍、脳卒中で1.8倍となっています。
厚生労働省が2015年度に行った「たばこ対策の健康影響および経済影響の包括的評価に関する研究」によれば、実際に受動喫煙が原因で病気を発症し亡くなる人は、国内では年間で1万5,000人に上ります。

受動喫煙が妊婦や子どもの身体に及ぼす影響

受動喫煙の影響を最も大きく受けるのは、身体がまだ発達途中の段階にある子どもです。こちらも日本呼吸器学会のデータですが、受動喫煙下にある子どもはそうでない子どもに比べて、虫歯のリスクは2倍、肺炎や気管支炎のリスクは1.5~2.5倍、気管支ぜん息のリスクは1.5倍に上昇するといわれています。
また、低年齢の子どもほど受動喫煙の影響を強く受けやすいことも特徴です。受動喫煙下にある乳幼児はそうでない乳幼児と比較して、乳幼児突然死症候群(SIDS)のリスクが4.7倍も上昇します。
さらに、受動喫煙は、お腹にいる子どもにも影響を及ぼします。受動喫煙下にさらされている妊婦はそうでない妊婦に比べ、流産のリスクは1.1~2.2倍、胎児が低出生体重児として生まれるリスクは1.2~1.6倍に上昇するとされています。

「分煙」ではタバコの影響をゼロにはできない!

近年、受動喫煙やそのほかのタバコの影響が大きな問題として取り沙汰されるようになり、職場に何らかの喫煙対策を施す企業が増えています。多くの企業が取り入れているのは、屋内に喫煙ルームを設けてタバコの煙がある空間を限定する分煙対策です。しかし、分煙だけでは、タバコの健康被害をゼロにすることはできません。
タバコを吸い終わったあとも、喫煙者の髪の毛や衣服にはタバコの粒子やタバコに含まれる有害物質が付着しています。その有害物質が空気中の化学物質と反応して揮発する発がん性物質を吸い込むことを、「三次喫煙」といいます。三次喫煙も、タバコを吸わない人がタバコによって健康被害を受ける原因のひとつです。そのため、タバコを吸わない人の健康を守るためには、分煙ではなく禁煙する以外に方法はないといえます。

すべての人がタバコの影響を受けず、安心して働ける労働環境を

厚生労働省が平成27年に発表した「労働安全衛生調査(実態調査)」によると、受動喫煙対策に取り組んでいると回答した企業は、全体の87.6%でした。しかし、建物内部を含む自社敷地内すべてを禁煙にしている企業は15.2%、建物の内部をすべて禁煙にしている企業も約38.1%に留まっています。
職場内の全面禁煙にはさまざまなハードルがありますが、まずは2015年に施行された「労働安全衛生法の一部を改正する法律」の職場の受動喫煙防止対策に係る規定にもとづき、受動喫煙の対策を進めていきましょう。

<参考>
・『受動喫煙の環境学 健康とタバコ社会のゆくえ』 村田陽平 著 世界思想社
・一般社団法人日本呼吸器学会「受動喫煙の害」
https://www.jrs.or.jp/modules/citizen/index.php?content_id=83
・一般社団法人日本生活習慣病予防協会『紫煙の怖さと生活習慣病予防』
http://www.seikatsusyukanbyo.com/monthly/2011/nosmoke/column/002.php
・厚生労働科学研究費補助金 循環器疾患・糖尿病等生活習慣病対策総合研究事業「たばこ対策の健康影響および経済影響の包括的評価に関する研究」平成27年度報告書
https://mhlw-grants.niph.go.jp/niph/search/NIDD00.do?resrchNum=201508017A
・厚生労働省 平成27年労働安全衛生調査
http://www.mhlw.go.jp/toukei/list/dl/h27-46-50_kekka-gaiyo.pdf
・厚生労働省「労働安全衛生法の一部を改正する法律に基づく職場の受動喫煙防止対策の実施について(平成27年5月15日付け基安発0515第1号)」
http://www.mhlw.go.jp/file/06-Seisakujouhou-11200000-Roudoukijunkyoku/0000085286.pdf
・厚生労働省の最新たばこ情報「たばこのリスク」
http://www.health-net.or.jp/tobacco/menu03.html


カテゴリー : 喫煙と健康

キーワード : 受動喫煙